11月8日、超特急22ndシングル『NINE LIVES』の特典会のため、幕張に行ってきた。
エビライが終わってすぐ、夢8とキラリに入会した勢いでCDをアホみたいに(当社比)予約した。前回の特典会に参加したフォロワーにこっそり相場をリサーチしたりしていたものの、当落発表前日にInstagramで超特急公式アカウントを遡っていたら、前回の『Why don't you 超特急?』から今回の『NINE LIVES』にかけて、個人アー写のいいね数が全員1.5倍以上に跳ね上がってることに気がついてまったく生きた心地がしなかったが、無事にリョウガさんのお渡し会と2ショット撮影会に当選した。
当落が出た頃は本当に、本当に人生で一番仕事がキツくて(いや今も現在進行形でキツいんだけど)、逃げ場のない地方の出張先で誰にも頼れず、責任だけは重い仕事を押し付けられて客先に罵倒されまくっていたので、深夜の真っ暗な社用車の中で光る「当選」の文字を見て、嬉しいというよりは安心したのを覚えている。「この日までは生きられる、生きなきゃ」と思った。割とマジでこの日がなければ田舎の寂れたビジネスホテルで首を括っているところだったと思う。
狭くて殺風景なホテルの一室で、毎日疲れ果てて化粧も落とさず電気もつけたまま気を失うように眠り、同じ時間に飛び起きて、重い身体を引きずるように身支度をする。出張先では通勤時間もほとんどないから、この朝の時間に音楽を流すのが数少ない自分の自由時間になっていって、毎日日替わりで超特急の曲を聴いては泣いていた。a kind of love、Burn!、Big Ta-Da!、EBiDAY EBiNAI、What's up!?、Jesus、ラキラキ、asayake…… 超特急には社会人が世の中の世知辛さに歯を食いしばって耐えるための曲が充実しすぎている。ありがたいけど、彼らにもわたしにもなんて厳しい世界なんだろうと悲しくもなってしまう。彼らもこうして自分自身を鼓舞し続けていないと耐えられなかったことがたくさんあったのだろうと想いを馳せてしまう*1 。彼らの仕事の量も責任も、わたしとは比べものにならないだろうに。
現場のために自分を着飾るのは得意ではないけれど、仕事にコテンパンにされてヨレヨレのままの自分でリョウガさんに会いに行くのはさすがに癪で、自分のために何かしたいと思った。ちょうど編み物にハマっていたので、自分で編んだ服を着て2ショットを撮りたいなと思いついた。なけなしの休みで手芸店をハシゴして、編み図本と気に入る紫色の毛糸を探し歩いた。
編み物セット一式を出張先にも持ち歩いて、毎朝10分編み物を進めてから仕事に向かうようになった。もちろん超特急の曲を聴きながら。無心になれて精神のMPを温存しておくことができたし、デジタルデトックスにもなるし、何より仕事で奪われ散らかした自己効力感を取り戻すのにとてもよかった。
色も形もめちゃくちゃ好みの紫色のニットビスチェを完成させて、急遽猫耳と名札もゼロから手作りして、当日を迎えた。
特典会当日がリョウガさんの個人イベントの当落発表日でもあったので(どうしてそんなことをするの)、やきもきしながら特典会に臨むのも嫌で、幕張に向かう道中に歩きながらヤケクソで確認した。相当な倍率だったようだがサイン会が当選していて、京王線の乗り場へ向かう東京駅のバカ長い動く歩道で五度見した。もし今日やらかしても次があると安心して特典会に行けたのでありがたかった。
あらかじめ聞いてはいたが、その日の幕張はありとあらゆるイベントが密集して開催されており、駅前がKAT-TUNKAT-TUNKAT-TUNももクロKAT-TUNイコラブKAT-TUNKAT-TUNリトグリKAT-TUNももクロKAT-TUNLUNA SEA超特急みたいになっていた。黒系の服に差し色に紫を身につけている人は全員同担に見えてビビり散らかしていたが、よく見るとだいたいKAT-TUNのトートバッグを持っているので中丸担だった。
駅から幕張メッセまで歩く道すがら、朝から1人で誰とも会話していなかったせいで声がカッッッッッスカスになっていることに気づき、これはまずいと後から合流するフォロワーに急遽電話で準備運動をさせてもらった。緊張すると声がどんどん低くなって吉澤要人さんみたいになってしまう癖があるのでずっと半分裏声で喋っていたが、フォロワーが気づいていたかは定かではない。
午後2時頃、お渡し会最終第4部の受付が始まる。
整理番号などが厳密に決まってるわけじゃないから、自分のタイミングで行かないといけないのめちゃくちゃ覚悟がいる。入口前を無意味に5往復ほどしてから入場する。リョウガさん列の受付のお姉さんがとっても愛想のいい方で、身分証を返却しながら「いってらっしゃい!✨」と朗らかに送り出してくれた。ここはディズニーランドか?
特典会列って純度100%同担しかいないからもっと殺伐としているもんだと思ってたけど、リョウガさんの列はなんだか想像より穏やかな空気感だった。お召し物が乱れてしまって慌てるオタクに、その後ろのオタクが「荷物持ちましょうか?」と声をかけたり、リョウガさんのトレカと一緒に「妊婦さん声かけてください、席譲ります」と書かれたキーホルダーをカバンにつけたりしているのを見かけた。以前もリョウガさんの誕生日にTwitterで「誕生日プレゼントに代えて慈善団体に寄付をしました」と投稿しているオタクを見てそれめっちゃいいな〜自分も来年やろ〜と思ったが、本人が別に積極的に啓蒙したりしてるわけでもないのに社会奉仕の精神が強い人が集まっているのは、やっぱりリョウガさん自身が優しい人だからなのかなぁと考えた。
何分並んだとか考える間もなく順番が来る。荷物を置いて、盗撮機器を身につけてないかチェックを受けてから入室。
お渡し会ではメンバーはバーカウンターにあるような少し高さのある椅子に座っており、だいたい目線の高さが同じくらいになる。他のメンバーはどういう姿勢だったかはわからないが、リョウガさんはさらに目の前のテーブルに片肘をついて、前傾姿勢で覗き込むように出迎えてくれる。指定された立ち位置まで行くと想像よりはるかに近く、少し手を伸ばせば簡単に触れられてしまいそうな距離にリョウガさんの顔があって、それだけで立っているのがやっとという気持ちになった。
想像よりもはるかに小さなお顔に、想像よりもさらにはるかに大きな瞳が行儀良く乗っかっている。衣装と融けあうように澄んだ漆黒で、「黒曜石のよう」という月並みな比喩はこの時のためにあるのか、と思った。
不思議なくらい光を反射しない真っ黒な瞳だけど、暗いとか怖いという印象は一切感じられなかった。とろけるようにめいっぱい眉尻を下げて微笑みながら、誰がどう見てもガチガチに緊張しているわたしが話し始めるのを穏やかに待ってくれている。
加入オーディション受験当時のシューヤさんが「(実際会ってみたら)リョウガくんが一番カッコよかった」と発言していたという逸話*2 もあるように、初めて近くで会うリョウガさんはそれはそれはキリッとしていてかっこいいのだろう、とばかり想像していたが、意外にも第一印象は「かわいい」が大部分を占める結果となった。
特典会に来るのは初めてであることと、まずは何がきっかけで好きになったかがわかった方がいいかと思って、正直に「Resplandorが好きで……」と伝えてみた。呆れたような、困ったような、照れたような笑顔のままうなだれられてしまった。おそらく朝から数多のオタクにリクエストされまくっていたのだろう。困らせてしまった矢先申し訳ないが、猫耳の裏側とつむじが至近距離で見られてレアだな……と思った。
言葉が返ってこなかったことにより沈黙に耐えきれなくて、そんなつもりなかったのについ口をついて「セリフお願いしてもいいですか?」と言ってしまった。
リョウガさんはキャリア14年のプロのアイドルなのでもちろんちゃんと応えてくれた。マイクスタンドに手をかける振りをして、イントロから歌ってくれる。
ここまでくるともはやセリフがどうとかは正直全く頭に入ってこず、わたしの発話に対してリョウガさんが目の前でリアルタイムで応えてくれる、という今の状況全体にキャパオーバーを起こして完全に記憶を失ってしまった。側から見たら無駄にヘラヘラしていて本当にキモかったことだろう。せっかくリクエストに応えてもらったのにありがとうの一言もまともに言えたか定かではない。失礼な奴である。
いつの間にか手渡されていたらしい大判のポストカードを握りしめて、「ツーショも行きます」とだけ喉から絞り出した。逃げるように立ち去ろうとしたわたしにも、リョウガさんは「ありがと○○〜」と名前を呼んで応えてくれた。そういえば名札をつけていたんだった。
こういった演者と直接言葉を交わせるイベントに参加するのは初めてではないが、名札をつけて参加したのは初めてだった。いいシステムですねこれ。参加者は「名前を呼んでほしい」という要望をタイムロスなく伝えられるし、演者も対応に困らない。自分の場合は自分が矢継ぎ早に話しかけまくってしまったので、リョウガさんは名札の存在に気づいてから呼ぶタイミングをずっと窺い続けてくれたのだろう。申し訳ない。友人からも名字で呼ばれることが多いから、自分の下の名前を、家族以外の人間から、こんなに囁くように優しく呼ばれたのはいつぶりだろうと思った。
放心状態でひとまずホールを出て、路肩で荷物をまとめているところをフォロワーが捕まえてくれて、安心感で崩れ落ちるように抱きついてしまった。
ここからわたしもフォロワーも最終の9部まで待機のため、フォロワー経由で出会ったオタクにそれぞれのレポを聞いたり、これからツーショに向かうオタクを見送ったりして過ごした。
間にグッズの交換をしたり人混みを縫って食事を取ったり慌ただしく過ごしたはずだが、それでもさすがに9部まで待つのは長いと感じたので、あの時間ずっとほぼノンストップでオタクと写真を撮り会話し続けていた演者たちには本当に頭が下がる。
用意してきた猫耳をつけて、ユーキさん推しのフォロワーとTwitterに順次流れてくるレポを眺めながら、それぞれ何を話そうかああだこうだと悩みながらホールへと戻った。フォロワーの猫耳がスコティッシュフォールドみたいな形状で、よく似合っていてかわいかった。ユーキさんとの身長差を感じたくてヒールのないパンプスを引っ張り出して履いてきたことも教えてくれた。かわいい。
お渡し会で列に並んだ時より少しだけ心の余裕ができたので、他のレーンを眺めてみる。今回はメンバーの衣装が黒基調なのでそれに合わせて黒っぽい服のオタクが多い中、明らかにユーキさんの列だけが燃え盛るように真っ赤で笑ってしまった。一緒に入場したフォロワーが先に終わったようで、ちょうどその真っ赤な列の横を軽やかな足取りで歩いていくのが見えた。
スタッフにスマホを預けてブースに入ると、リョウガさんが画角のチェックをしてくれているのが見えた。立ち姿だとさっきより頭の小ささが際立って、シュッとしていてかっこいい。リョウガさんの大きな瞳がわたしの姿を捉えるとキリッとした表情に変わり、掌でわたしの立ち位置を指して迎え入れてくれた。挨拶も忘れて思わず笑い声が漏れる。リョウガさんの独特の出迎えがかわいくておかしかったのもあるけど、どちらかというとやっぱり、リョウガさんが目の前にいて、自分の一挙手一投足に応じてレスポンスが返ってくる、自分の存在や言動が好きなアイドルの言動に影響を与えている、という状況がありえなくて、飲み込みきれずに溢れてしまった感情だった。
お渡し会よりもはっきりとした声音で名前を呼んでもらえた。撮影してすぐさま「耳すごいじゃん」と褒めてくれた。ビスチェも作ってきた旨をお伝えすると「天才かよ!」と畳み掛けてくれた。制作途中に「作ってきたこと自分で申告するべきかな……」と相談したら「アンタそれ何のために作って着ていくつもり⁉️」とブチギレてくれたフォロワーには感謝しかない。衣装とお揃いのつもりで奮発して買った黒いレースのスカートも、リョウガさんの方から気づいてくれた。たくさん褒めてもらえたのに喋るのに必死で、やっぱりお礼のひとつも言えなかった気がする。
サイン会の当選を報告したら驚いたようなリアクションをされたので、本人も予想以上の落選報告を聞いてショックを受けていたのかもしれない。始まる前はこれが最初で最後……くらいに思っていたのに、すっかり次の約束ができるのが嬉しかった。現金である。
追い詰められていた時に出会えて本当に救われました、と感謝を伝えたい気持ちは山々だったけど、本気で泣いてしまいそうで言えなかった。せっかくの初めましてをしんみりさせたくなかったし、言わなくて正解だったと思う。気が向いたら手紙にでも書こうかな。わたしがリョウガさんに手紙を出す時って来るのだろうか。
フォロワーと合流して慌てて会場を後にし、KAT-TUN帰りとディズニー帰りの人混みをタッチの差で躱して東京駅のプロントに逃げ込んだ。打ち上げのつもりだったのに、2人して各々のツーショを無言で眺め続けていて笑ってしまった。
最近だと「推し活」の悪しき側面として取り沙汰されることも多い特典会だが、やっぱりわたしにはかけがえのない時間になったし、参加できてよかった、開催してくれてありがとう、と思う。
タレントを殺風景なホールに丸1日閉じ込めて、代わるがわるやってくる数百人のオタクと会話し続けるという心身ともに負荷の高い業務をさせるのは、やっぱり労働環境としては非人道的と言わざるを得ないし、オタクに札束の殴り合いで特典会参加権を奪い合わせるついでにCD売上を稼ぐやり方もまったく持続可能ではないから、どちらも何らかの規制が作られるべきだと思う*3 。それでも、多くのコストをかけて、葛藤を抱えてでも特典会に参加したい、会いに行きたいと思ってしまうのは、自分とアイドルの間を繋ぐ関係性の糸がたしかにあることを実感できるからかもしれない。
わたしは、アイドルとファンの関係も、儚く歪ではあるかもしれないが、一方的な信仰でも消費でもない数ある人間関係のひとつのかたちで、それ以上でも以下でもないと思っている。ファンの立場しか味わったことのない自分のただのエゴかもしれないし、アイドル側は本当はどう思っているかわからない(リョウガさんは特にわからない)けど、少なくともわたしはそうであってほしい、と思っている。
我々ファンは、参加することができたライブ、見聴きすることができたメディア、日々更新されるSNS、それらを介して感じ取ったアイドルの一瞬の言動、表情、仕草といったその人のかけらを集めて自分だけのアイドル像を自分の中に結び、それを愛している。その像はファンの数だけ生まれ、そのどれもがそのアイドルその人の本質そのものではない。でも、その切ないすれ違いはアイドルとファンの関係性に固有のものではなく、我々が日常生活の中で友達、家族、同僚、恋人に見せる顔がそれぞれ異なって存在することと大差ないと思う。だからこそ、相手が身近な人であっても、アイドルであっても、自分とその相手との間にだけ生まれる、同じものはふたつとない唯一の関係を結ぶことができる。それが双方向のものとして存在することを確かめるために、顔を合わせて話してみたいと思うのかもしれない。たかが数十秒で、と思われるかもしれないけど、たった数十秒でも直接同じ空間で、一対一で顔を合わせて言葉を交わすことで得られる情報量はとてつもなく多い。言葉や表情だけでなく、目線、間合い、空気感。
TLに流れてくるレポを斜め読みするに、リョウガさんはたぶん、特にファン1人1人に合わせて対応を変えてくれるタイプのアイドルだ。だとすれば、わたしを目の前にした瞬間にだけ現れるリョウガさんの姿が明確に存在するわけで、それはこの世でわたししか知り得ない。そんなわたしの瞳だけに映るリョウガさんが、(サービスを提供する側とサービスに金を払ってそれを享受する客という力関係の存在は当然無視できないにせよ)対等な1人の人間としてわたしと向き合って、リョウガさん自身が思い考えるリョウガさんなりの方法で、わたしが自分と過ごすわずかな時間を、できる限り実りあるものにしようと優しく気を配ってくれているのが、それがわかるのがこんなにも純粋に嬉しい。ファンとしてきちんと愛されていると感じる、と言うとやや聞こえは大仰だが、少なくとも、リョウガさんとわたし──アイドルとファンの間に"本物"の情緒的な繋がりはないなんて、そんなわけはないじゃないか、と、ライブとはまた異なる形で思わせてくれる。
そしてわたしはまた、リョウガさんがわたしにだけ見せてくれた姿を材料に、わたしの中にしかないリョウガさん像に筆を加える。それは、認知が欲しいとか特別扱いされたいとかよりももっと根源的な次元で、わたしがリョウガさんに向ける感情を、リョウガさんとわたしを繋ぐ朧げな何かを、唯一無二の特別なものにするには十分すぎる。ただ目の前にいるだけ、目が合うだけ、「ありがとう」「また来てね」とありきたりな言葉をかけてくれるだけで魔法はかかる。でもその魔法は、彼らが元より「アイドル」と呼ばれる特別な魔法使いとして生まれたからではない。日々の仕事に全身全霊で打ち込む中で、人を喜ばせる技術をひたすらに磨いてきた、真面目で優しい1人の人間だからだ。
これまで自分が好きになったアイドルは、アイドルという仕事だからこそ実現できる表現したいものを自分の中に確固として持ち、それを目指して活動している人が多かった。その人がなりたいと願う姿に近づいて、それが自分の見てみたい景色と重なることが嬉しくて、アイドルのオタクをやってきた。
リョウガさんにとってのそういうアイドルを続けるモチベーションが何なのか、正直まだあまり掴めていない。リョウガさんがアイドルという仕事のこと、我々ファンのことをどう思っているかはさっぱりわからないし、推し量りようもなくて、ファンとしての心持ちをどこに置くべきか戸惑っていたけど、今はせめて、あなたがアイドルとして存在してくれるおかげで、楽しく生きている人間がここに1人いますよ、ということを、自分なりに示していくことができたら、それで十分だと思える。
君のマニュアルは 存在しないから
どんな時でも 僕の想い
ちゃんと届いてる? 確かめていたい
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